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更新日:2021年8月30日

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【市長コラム】人間力で拓くこれからの時代

市報「広報とりで」2015年9月15日号に掲載した市長コラムです。

人類の歴史は成長・拡大の時代とその状態が定常化(安定)する時代があり、そのサイクルを3度経ているという捉え方があるそうです(広井良典著、ポスト資本主義)。第一のサイクルは狩猟採集、第二のサイクルが1万年前に農耕が始まって以降の成長・拡大期とその成熟、第三のサイクルが産業革命以降の二百数十年の拡大・成長期だそうです。第二サイクルの農耕の時代、成長・拡大の時期から定常期へ移った時に「普遍的な原理」を志向する思想が各地で同時多発的に生まれたそうです。インドの仏教、中国の儒教や老荘思想、中東での旧約思想等です。人口爆発に伴って、森林枯渇や土壌の浸食が進み、農耕文明が資源・環境的制約に直面し、時を同じくして今日に残る偉大な精神文化が開花したと言うのです。

さて、私たちの国日本も、90年代から続く経済の低迷や東日本大震災等の甚大な自然災害、原子力発電所の事故を経験して「経済の拡大と科学技術の進歩による生活の向上」という考え方が限界を来たしつつあります。頼りにできる物差しが見出せない模索の時期に入ったかのようです。

しかし、水面下で新しい時代を切り拓くための胎動がそこかしこで始まっていることを見逃してはいけません。私は本年7月に新潟県十日町市を訪問して、同市の移住・定住化策について調べてきました。若者が流出し、高齢者のみが残った中山間地の集落の存続は難しい課題です。同市では、平成21年度から「地域おこし協力隊」を活用し、現在までに41人を任用し、現在は17人が住民に寄り添いながら活動しています。驚いたことに、3年の任期を終えた隊員が16人、家族を含めて30人が定住したそうです。ある隊員の談によれば、暮らしの名人と言える年配者の知恵や技術に圧倒され、聞き役に徹したことで、信頼を得て人脈が広がり、野菜の流通や里山ガイドなどの仕事を得て暮らしているそうです。職場以外は匿名で暮らせる大都市生活の便利さと気楽さも選べたのに、地(じ)の暮らしをする中で周りの人との関係性を深め自分流に「なりわい」を組み立てていくことを選んだ勇気をたたえたいと思います。

取手市も、東京圏の住宅都市としての第一級の機能性・利便性を堅持すると同時に、「都市と田園が両立している取手ならではの暮らしぶり」に大いに惚(ほ)れ込む都市住民を招き入れ、ともに生活者一人ひとりの価値観、人生観を思い描き、その実現に資する風土を皆で作っていくという姿勢が大切になると思います。

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